時代の記憶を伝える「松右衛門帆」
日本最古の帆布「松右衛門帆」は、工楽松右衛門の地元、高砂の御影屋が、神戸芸術工科大学の協力を得て再現した。松右衛門帆の復活について御影屋の柿木貴智(かきのき・よしのり)代表は、「松右衛門帆を発明した工楽松右衛門は、日本全国で活躍した高砂の歴史において重要な人物。歴史ある産業を復活させることによって地元の偉人の存在を全国に広めたかった」と開発のきっかけを語る。
兵庫の伝統産業の結集にこだわり、製造はすべて兵庫県内で行っている。自ら織機を導入し、御影屋内で生地を織りあげ、染色は近隣の多可町で。さらに持ち手などの革はたつの市でなめし、製品の多くは鞄の街、豊岡で縫製している。松右衛門帆は1本ずつ平織りされた一般的な帆布と違い、縦横の太さが違う糸を2本引きそろえて織る。これを再現をするためには1970年代に製造されたレピア織機を使い、1日当たり最大で30メートルしか織ることができない。手間と時間をかけることで時代の記憶が蘇るような唯一無二の帆布ができ上がる。
柿木さんは、「いずれは松右衛門帆を世界に向けても発信していきたい。そして、工楽松右衛門のストーリーをより多くの人に知ってもらいたい」と話している。