充実した鉄道網と運行精度の高さを誇るスイス国鉄とモンディーンは深いつながりがある。1951年、「Frank & Bernheim」という時計の輸入販売会社としてブラジルで設立され、1954年に社名を「モンディーン」に変更。1986年にはスイス国鉄と独占契約を結ぶと、鉄道時計の供給を開始した。その後、販売を開始した「スイス国鉄オフィシャル鉄道ウォッチ」は、その視認性の高さとシンプルで完成されたデザインで、誕生から20年以上が経過した今もなお世界中で支持されるロングセラーだ。
この時計のモデルとなったのは、1940年代にスイス国鉄のエンジニアでデザイナーだったハンス・ヒルフィカー氏が開発した「スイス レイルウェイ ステーションクロック」。遠くからでもよく時刻が読み取れる、視認性の高いステーションクロックで、今でもチューリッヒ駅にある高さ4メートルのモンディーンのミーティングポイントクロックを始め、スイス国鉄の駅3000箇所以上で目にすることができる。ヒルフィカー氏は、クォーツ時計や電波時計がまだなかった時代に駅構内の全ての時計が同じ時刻を示すよう工夫を重ねた。毎分秒針が58秒で一周し、12時の位置で2秒間停止、その間に電気信号を受けて全ての時計の秒針と分針が一斉に動き出すという機構だ。この“Stop To Go機能”を搭載したクロックは、スイス国鉄の正確な鉄道運行を象徴する時計として、世界中の人々にその精度の高さをアピールした。
スイス国鉄の歴史を紐解くと、駅長は列車の出発時間がくると乗客と車掌に特別な赤い発車信号灯を用いて知らせていたという。いまではこの赤い発車灯を見ることはできないが、この発車灯をモチーフにした赤い秒針を配したモンディーンの時計に、その足跡が残されている。
モンディーンの時計はほぼ全てのコレクションがスイス国内で製造。優れたデザイン性と、リサイクル素材の使用など環境に配慮したものづくりが評価され、1993年に「German Design Plus」を受賞した。その他、世界環境保護に関する「アルプ・アクション・コーポレート賞」や、世界の優れたデザイン999点を取り上げた「DESIGN CLASSICS」(PHIDON社刊)にも選ばれている。